香樹院語録を味わう

江戸末期の真宗大谷派講師、香樹院徳龍師の語録を読んでまいります。

九 二種の疑ひ

香樹院語録 11―1

 疑ひと云ふものに、枝末と根本との二つあり。枝末の疑ひと云ふものは、親子夫婦兄弟などの中に、毎日毎日起りて、本に思はぬ事ぢや。根本の疑ひといふは、さつぱりとあかるうなりて、胸の中に、どうも虚言ぢやと思はれぬ様になられぬことぢや。たとへば、其の方の子は狐ぢやほどに、油断をするなと人が云ふたとき、どう思ふても我が産み落して育てた子なれば、狐ぢやとは思はれぬ。これ人の言葉に轉ぜられぬ也。

 ※仏のお心が届いて、仏のお心の中で暮らすようになれば、やがて、本願のお力が働きを現す。そうなれば疑おうにも疑いようがなくなる。