香樹院語録を味わう

江戸末期の真宗大谷派講師、香樹院徳龍師の語録を読んでまいります。

香樹院語録 1―1

 香樹院講師は、我が真宗大谷派の先輩中、學徳両全の尊宿なりしことは、何人も首肯する所なり。故に其の片言隻語も、後輩の精神修養、信後相續の爲めの金科玉條ならざるはなし。柏原祐義、禿義峯の二氏、 日課の餘暇を以て、禿氏の大人、顯誠老宿所藏の講師法話等に依りて、三百個條を纂集し、題して香樹院語錄と云ふ。勉めたりと謂ふべし。余は近来、此の如き書の續出するを喜ぶものなり。何んぞや。此等の書を反復讀過すれば、彷彿として先輩の前に在るが如き感あればなり。十餘年前、余、越後水原、無爲信寺に宿し、講師の墓に詣して、親しく其の碑文を寫しおきたり。故に碑文の延書を附錄として、序文の不備を補ふ。

 明治四十一年八月十日
 碩果生 南條文雄