香樹院語録 6―3
南無阿弥陀仏
教行信証・信巻にいわく、それ真実信楽を案ずるに、信楽に一念あり。「一念」は、これ信楽開発の時剋の極促を顕し、広大難思の慶心を彰すなり、と。親鸞は信楽獲得の瞬間(一念)を念仏行者は自覚すると言っている。極めて大事なことです。なぜなら、信楽の一念というさとり体験を伝えて来たのが仏教の伝統だからです。信楽の獲得とは気づいたら得ていたなどと言うことではない。念仏の行者はただ聞いているのではない。みなこの信楽の一念が起こるのを待っているのです。蓮如はそれを時節到来と言った。蓮如もその瞬間を経験したのでしょう。本願成就文には、信心歓喜乃至一念。即得往生住不退転、とある。信楽の一念に浄土の門は開き、仏への道が開け、仏となる身に定まる。必ず仏になるから、徳龍師は、生死をはなるゝ時節到来と思へば心安樂、と喜んだ。信楽に一念あり。菩薩因位の悟り、初地不退を得るためにわれらは聴聞している。善及